●第3回TPPと共済 国公共済会事務理事 松渕秀美

国益を損なうTPPは、一日も早い離脱を


 4月20日、TPPに参加する11カ国は日本のTPP交渉参加を全会一致で承認しました。これを受け、オバマ政権は4月24日、米議会にTPP交渉に日本を参加させる方針を通告しました。これで日本は、7月下旬にも開かれる交渉会合から参加できる見通しとなりました。しかし、通商代表部が米議会に宛てた書簡には「日本は農業や製造業を含めすべての項目を交渉することを確認した」と記されています。安倍首相は日米が合意した4月12日、記者団に「この日米の合意については、日本の国益はしっかりと守られている」と発表していますが、欺瞞であることは明らかです。それどころか昨年6月に遅れてTPP交渉参加を発表したカナダのファスト国際貿易相は、朝日新聞の取材に対して「後から入った国は、すでに決まったことを覆せない」と指摘しています。国益を損なうことが明白なTPP交渉参加から、一日も早く離脱するべきではないでしょうか。

規制緩和ではなく規制強化

 さて、前号で保険分野への米国の要求は1993年から始まったことを紹介しましたが、『ガン保険』(第三分野の医療保険)を例にその後の流れを簡単に見てみましょう。1994年10月の「日米保険協定」で国内生損保会社はガン保険を販売できなくなりました。この時期、日本で「ガン保険」を売っていたのは、アメリカンファミリーほぼ1社だったため、同社がフルに恩恵を受け事実上の独占となりました。その後、日本政府が国内生保の子会社にガン保険の販売を許可する意向であることを察知した米国政府は、日本に再度の保険合意を迫り、1996年に『激変緩和措置』と称して日本の生保子会社の第三分野の商品販売を禁止することを約束させました。日産生命、東邦生命が破綻し、外国資本の軍門に下っていく一方で、1999年にはアメリカンファミリーのがん保険シェアは85%を超えました。その後も第百生命、大正生命、千代田生命、協栄生命が破綻し、2001年になって、ようやく既存の生命・損保「子会社」の第三分野参入が解禁、2003年7月に「全面」解禁となりました。今でもアメリカの保険資本はガン保険で確固としたシェアを保ちながら、引き続き既得権益確保のために「かんぽ」の第三分野への参入を阻止しようと画策していることはご存知のとおりです。規制緩和といいながら、これでは規制強化です。

多くの国民の声の集積が 今後の重要な取り組みに

 もう一つ、共済が規制の対象となった2006年の保険業法「改正」前後の状況を見てみましょう。実は、保険業法を議論していた金融審議会が2004年12月14日に示した「新しい規制のイメージ」では「構成員が真に限定される共済は適用除外」とされていました。ところが翌年3月、金融庁が国会に提出した資料からはその文言が消えていたのです。また、2005年8月12日の「改正」保険業法施行規則案では、県単位のPTA共済は適用除外とされていましたが、同年12月28日の最終案では適用対象とされてしまいました。その間の9月22日、在日米国商工会議所は「都道府県単位の「PTA連合会」による共済等に対しては保険業法を適用すべき」との意見を発表しています。金融庁と審議会が外圧に屈したのは明らかでしょう。このように、米国は微に入り細に入り内政干渉してきています。
 「改正」保険業法により事業継続が困難となる共済団体は、規制が完全適用となる2008年4月までに@保険会社に移行する、A小額短期保険会社になる、B廃業する、のいずれかの道を選択せざるを得なくなりました。いずれもハードルが高いため、医療関係者や自営業者、登山者、PTA、障害者など様々な分野の団体や関係者、個人・研究者等が元に戻すべきと声を上げ政府と国会に働きかけました。その結果、2006年4月以前から共済事業をおこなっていた団体は一般社団資格を所得することにより「認可特定保険業者」として共済活動を続けることができるように2010年11月に保険業法が再度改正されました。これは、たくさんの国民の声が集まれば、例え米国の圧力があっても日本政府は無視できないということです。TPPをはじめ原発や社会保障、賃上げと雇用、消費税増税、平和と憲法など課題が山積していますが、教訓とすることが重要ではないでしょうか。